■本作を契機にスーパースターの道を歩み続けたリンダ リンダ・ロンシュタットは1946年7月15日、アリゾナ州ツーソンで父方のドイツ系メキシコ人の血をひく音楽一家に生まれ、幼い頃から音楽に親しんで育ちました。高校時代にフォーク・ソングを歌うようになり、地元で活動。1965年にLAでフォーク・トリオ、ストーン・ポニーズ(The Stone Poneys)を結成。やがて大手のキャピトルと契約し、1967年にアルバム・デビュー。3枚のアルバムをリリースしました。引き続きキャピトルとソロ歌手として契約。ソロ・4作目『ドント・クライ・ナウ』(73年9月)は、西海岸の新興勢力が結集しつつあった話題のレーベル、アサイラムからリリースされるも、キャピトルとの契約がアルバム1枚分残っていたため、本作となる5作目『悪いあなた』(74年11月)はキャピトルから発売。ここから表題曲が全米No.1、続くシングル「いつになったら愛されるのかしら」が2位と、ビッグ・ヒットが生まれ、アルバム・チャートでもNo.1を獲得。ついにリンダにブレイクスルーが訪れたのでした。
悪いあなた / リンダ・ロンシュタット HEART LIKE A WHEEL / LINDA RONSTADT
01 悪いあなた YOU'RE NO GOOD (Clint Ballard, Jr.)
02 もうおしまい IT DOESN'T MATTER ANYMORE (Paul Anka)
03 あてにならない恋 FAITHLESS LOVE (J. D. Souther)
04 ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート DARK END OF THE STREET (Dan Penn & Chips Moman)
05 ハート・ライク・ア・ホィール HEART LIKE A WHEEL (Anna McGarrigle)
06 いつになったら愛されるのかしら WHEN WILL I BE LOVED (Phil Everly)
07 ウィリング WILLIN' (Lowell George)
08 アイ・キャント・ヘルプ・イット I CAN'T HELP IT (IF I'M STILL IN LOVE WITH YOU) (Hank Williams)
09 キープ・ミー・フロム・ブローウィン・アウェイ KEEP ME FROM BLOWING AWAY (P. Craft)
10 目を閉じてごらん YOU CAN CLOSE YOUR EYES (James Taylor)
【録音】 1974年6-9月
[初出]米 Capitol Records ST-11358(1974年)
[日本盤初出]東芝 EMI ECS 80129(1974年)
■発売日:2026年12月12日
■品番:ESSJ-90334
■仕様:CD/SACDハイブリッド
■JAN:4907034226443
■レーベル:Capitol Records
■音源提供:ユニバーサルミュージック合同会社
■ジャンル:ポピュラー
■DSD Mastering
■Super Audio CD 層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
■美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用
アメリカを代表するポピュラー・シンガー、リンダ・ロンシュタットが初めてアルバム・チャート第1位を獲得した、1974年の代表作です。このアルバムと収録曲のヒットを契機に、彼女はスーパースターとしての確固たる地位を築いていくことになります。それに加えてこの作品には、クラシック、ジャズとは全く違った音づくりのノウハウが詰め込まれています。
■アメリカ「こころ」と音楽を歌い続ける歌姫、リンダ・ロンシュタット
長年、ロックやポップスに親しんできた音楽ファンにとって、リンダ・ロンシュタットこそ、“歌姫”という呼称にもっとも相応しいシンガーだったのではないでしょうか。1970年代のリンダを知る人ならば、当時の彼女のスーパースターぶりを即座に思い出すことでしょう。ソリッドに引き締まった最新のウェスト・コースト・ロック・サウンドに彩られた、飾り気のない伸びやかで奔放な歌声、愛くるしい魅力的な容姿、と言えば何やら一般のポップ歌手のような形容になってしまいますが、リンダの場合、決して作られたスーパースターでなく、ナチュラル・ボーンな自然児としての意匠を掲げながら、アメリカ西海岸/南カリフォルニアのロック・シーンを成熟に向けて導く、その中核的存在だったことが思い出されます。リンダのバッキング・バンドからあのイーグルスが誕生したり、またリンダがジャクソン・ブラウン、J.D.サウザー、カーラ・ボノフ、ウォーレン・ジヴォンといった優れたシンガー・ソングライターの作品をいち早く取り上げ、ウェスト・コースト・ロックの活性を率先して牽引したことも、彼女の大きな業績に数えられるでしょう。
リンダがこれまで歌ってきたジャンルを振り返れば、アメリカとその周辺の音楽のほとんどの分野をカヴァーする、壮大な視界が浮かび上がります。フォークとフォーク・ロックに始まり、カントリー、カントリー・ロック、シンガー・ソングライター作品、ロックンロール、R&B、そして70年代シーンの最前線に躍り出たウェスト・コースト・ロックの数々の名作…。さらに名声を確立して以降は、オペラ、ネルソン・リドルを編曲・指揮に迎えたポピュラー・スタンダード三部作、映画主題歌、メキシコ歌謡、ラテン音楽、ジャズ・ヴォーカルに至るフィールドへと果敢に取り組んだリンダ・ロンシュタット。これほど広範なジャンルが一人の歌手によって、真っ向から歌われた例は他に類をみません。しかも、それらは音楽ビジネス上の戦略でなく、英才教育によって育まれた才能とも無縁の、リンダという、いわば草の根の個性によって実践されたことに、音楽ファンは永遠の夢を見続けることになったのです。70年代の“西海岸の歌姫”という讃辞から、“アメリカを代表する歌姫”と称されるようになった理由はそこにあるのです。
■本作を契機にスーパースターの道を歩み続けたリンダ
リンダ・ロンシュタットは1946年7月15日、アリゾナ州ツーソンで父方のドイツ系メキシコ人の血をひく音楽一家に生まれ、幼い頃から音楽に親しんで育ちました。高校時代にフォーク・ソングを歌うようになり、地元で活動。1965年にLAでフォーク・トリオ、ストーン・ポニーズ(The Stone Poneys)を結成。やがて大手のキャピトルと契約し、1967年にアルバム・デビュー。3枚のアルバムをリリースしました。引き続きキャピトルとソロ歌手として契約。ソロ・4作目『ドント・クライ・ナウ』(73年9月)は、西海岸の新興勢力が結集しつつあった話題のレーベル、アサイラムからリリースされるも、キャピトルとの契約がアルバム1枚分残っていたため、本作となる5作目『悪いあなた』(74年11月)はキャピトルから発売。ここから表題曲が全米No.1、続くシングル「いつになったら愛されるのかしら」が2位と、ビッグ・ヒットが生まれ、アルバム・チャートでもNo.1を獲得。ついにリンダにブレイクスルーが訪れたのでした。
このあとリンダはアサイラムに戻り、ヒット・アルバム、ヒット・シングルを連発しながら、スーパースターへの階段を駆け上がっていったことはご存知のとおり。こんにちまでにリリースしたアルバムは、ベスト盤を除いたオリジナル・ソロ・アルバムに限っても全23枚。プラチナ(100万枚以上のセールス)以上に輝いたアルバムが15枚、グラミー受賞歴11回、ポップ・チャートのトップ10以内にランクされたヒットが10曲という、輝かしいキャリアを重ねました。わけても80年代のネルソン・リドル編曲・指揮によるスタンダード三部作は、“アメリカの歌手”として挑んだ潔くも果敢な挑戦でした。このほかにも友人のエミルー・ハリスとドリー・パートン(彼女は惜しくも2026年8月に亡くなった)の3人による“トリオ”のプロジェクト、エミルーとのデュオ・アルバム、アーロン・ネヴィルやジミー・ウェッブ、デヴィッド・リンドレーの傑作アルバムのプロデュースをみずから行ったほか、膨大な数の共演・客演を行ない、存在感の大きさと高い評価を証明し続けました。
このソロ5作目は、そんなリンダ・ロンシュタットが誕生していく軌跡を記録したアルバムと言え、その若々しく、真っすぐな歌声を、いま、改めて楽しんでいただきたいと思います。
■陰で支えた敏腕プロデューサー、ピーター・アッシャーとリンダのコラボレーション
かねてからリンダに注目していたファンにとって、胸のすくようなブレイクスルーとなったのが74年11月にリリースされた本作、通算5作目のソロ・アルバムとなる『悪いあなた』、本作はピーター・アッシャーにプロデュースを依頼。以後、長く続くリンダ=アッシャーの黄金のコラボレーションが誕生しました。ご存知のようにアッシャーは、60年代のブリティッシュ・ビート時代にデュオ、ピーター&ゴードンとして数々のヒットを放った人物。60年代後期はビートルズのアップル・レコードのプロデューサー/A&Rとなり、ジェイムス・テイラーが渡英してレコーディングしたデビュー・アルバムのプロデュースを担当。その後渡米し、LAを拠点に本格的にインディペンデントのプロデュース/マネジメント業を開始。再びジェイムス・テイラーを手がけて大成功を収めました。本作でもアッシャーは、選曲からアレンジ、サウンド作りに至るまで深く関わり、リンダの魅力を鮮やかに引き出しています。
『悪いあなた』はアルバム・チャート、カントリー・アルバム・チャートともにNo.1を獲得。「悪いあなた」(1位)、「いつになったら愛されるのかしら」(2位)、「もうおしまい」(47位)とシングル・ヒットが続き、かつてない大反響を呼んだのがこのアルバムでした。以後、リンダの快進撃は70年代末まで続き、西海岸発のスーパースターへとのぼりつめて行きます。本作はその起点となった作品であり、同時にリンダの音楽的視界、歌手像が、最良のプロダクションとバランスのもとに描き出された名盤。その後のさらなる大活躍、スーパー・ヒット作を差し置いても、本作をリンダの最高傑作に挙げるファンは多いことでしょう。
■ポピュラー音楽ならではの独特な音作りのエッセンスが盛り込まれた作品。それをマスターテープからエソテリックが掘り起こします。
レーベルに関係なく、ロック/ポピュラー音楽でステレオが定着したのはビートルズの後期以降、それまではオリジナルはモノーラルというのが多く存在していました。そのステレオ音像・音場もクラシックやジャズとは全く違う感覚・イメージで作られていました。一同がホールやスタジオに集まり、あくまで自然な状態で音を録るということは少なく、各楽器、ヴォーカルは個別に録り、制作者が描いたステレオ音場に、キャンバスに絵を描くように各音を配置し、オーヴァーダビングを重ねていく方式が一般的になります。アナログ時代には、多重録音やダビングによるノイズや音質変化を考慮しながら、EQやコンプレッションを積極的に用いて音像を作り込む手法が発達しました。結果、デッドでソリッド、そしてタイトなサウンドが主流となり、それは「ウェスト・コーストの乾いたサウンド」とも言われていました。本作はそうしたレコーディングのもとに制作された、70年代のウェスト・コーストを代表するような、謂わばロック・ポップスにおけるステレオ録音の象徴とも言える作品と観ることもでき、その意味でも、サウンドの本質を極めたオリジナル・マスターテープからの復刻を当シリーズとしては願ったのです。
新たにマスターよりSuper Audio CDのためにリマスタリングを行いました。これまでのエソテリック企画同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われています。特にDSDマスタリングにあたっては、DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターとに、入念に調整されたエソテリック・ブランドの最高級機材を投入、また同社のMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を余すところなくディスク化することができました。
「ウェスト・コーストの乾いたサウンド」の真髄、マスターテープに刻まれた制作者のノウハウ・意図を本Super Audio CDから聴きとっていただければ幸いです。
01 悪いあなた YOU'RE NO GOOD (Clint Ballard, Jr.)
02 もうおしまい IT DOESN'T MATTER ANYMORE (Paul Anka)
03 あてにならない恋 FAITHLESS LOVE (J. D. Souther)
04 ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート DARK END OF THE STREET (Dan Penn & Chips Moman)
05 ハート・ライク・ア・ホィール HEART LIKE A WHEEL (Anna McGarrigle)
06 いつになったら愛されるのかしら WHEN WILL I BE LOVED (Phil Everly)
07 ウィリング WILLIN' (Lowell George)
08 アイ・キャント・ヘルプ・イット I CAN'T HELP IT (IF I'M STILL IN LOVE WITH YOU) (Hank Williams)
09 キープ・ミー・フロム・ブローウィン・アウェイ KEEP ME FROM BLOWING AWAY (P. Craft)
10 目を閉じてごらん YOU CAN CLOSE YOUR EYES (James Taylor)
【録音】
1974年6-9月
[初出]米 Capitol Records ST-11358(1974年)
[日本盤初出]東芝 EMI ECS 80129(1974年)
【オリジナル・レコーディング】
[プロデューサー]ピーター・アッシャー
[レコーディング・エンジニア]デヴィッド・ハッシンジャー、ヴァル・ギャレイ
[マスタリング・エンジニア]バーニー・グランドマン
[レコーディング・スタジオ]サウンド・ファクトリー、LA、他
[Super Audio CDプロデューサー]吉田穣(エソテリック・マスタリング・センター)
[Super Audio CDエグゼクティブ・プロデューサー]大間知基彰(エソテリック・マスタリング・センター)
[Super Audio CDリマスタリング・エンジニア]東野真哉(エソテリック・マスタリング・センター)
[Super Audio CD リマスター]2026年8月 エソテリック・オーディオルーム、「Esoteric Mastering」システム
[解説]宇田和弘、野澤龍介
[企画・販売]ティアック株式会社
[企画・協力]東京電化株式会社