25cmフルレンジ搭載で、L／Rchの2基に分割できる可搬型。
素直なサウンドと無骨な外観を愛でるヴィンテージスピーカー

　本機はフルレンジユニット搭載のヴィンテージ軍用可搬型スピーカーシステムです。銘板からは1950年代以後に米軍で使われたスピーカーと思われ、25cm口径のクアム・ニコルズ製シングルコーンフルレンジがマウントされています。

　上部に把手が付いた一辺が約40cmの立方体形状は一見ただの木箱ですが、キャッチクリップを外すとL／Rch用のスピーカーに分割されます。可搬型の構造はウェスタン・エレクトリック（WE）のスーツケース型スピーカーKS19134 L3にも通じ、分割後の正面がスラントした形状はアルテック622ユーティリティ・キャビネットにも通じます。側面のキャッチクリップを外すと背板が開けられ、エンクロージュア後面は開放状態となります。細めのスピーカーケーブルをユニットに結線すれば、クッションラバーが付いた背板を閉じることができ、密閉箱状態で使えます。

　『管球王国』118号の試聴取材では、6L6プッシュプル・モノーラルアンプのアルテック1520Tや、かつてセットで使われたと思われる軍用6V6プッシュプル・モノーラルアンプ（WEBSTER-CHICAGO CORP.　SOUND REPRODUCER RP-104/UIH-2）、さらには安価なD級アンプによって密閉箱状態で鳴らし、いずれのアンプでも素直で心地いいフルレンジサウンドが得られました。ヴィンテージオーディオに深いノウハウを持つウエスタン サウンド インク（W.S.I.）の土井雄三氏が内部の側面下部に吸音材としてガーゼを留めてチューニングすると、中低域にエネルギーのあるアルテック1520Tとの組合せではヴォーカルの膨らみがわずかに抑えられて音のバランスがいっそう整いました。

　エンクロージュアの木材がよく乾いていることも手伝って自然な音が得やすく、トーンコントロールによる音質調整も楽しみになるはずです。25cm口径フルレンジユニットを取り外して、サブバッフルを使って様々な小口径ユニットを試しても音の可能性は広がりそうです。無骨な外観も「アメカジ」的な魅力で、遊び甲斐のあるスピーカーシステムです。

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