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ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
■品番:ESSG-90261
■仕様:Super Audio CD ハイブリッド
■JAN:4907034224340
■レーベル:Deutsche Grammophon
■ジャンル:管弦楽曲
■発売日:2022年6月18日
流麗かつ豊潤、そしてパワフル―――カラヤンとベルリン・フィルが到達した至高のシュトラウス・ワールドが究極のDSDリマスターで登場。
■音楽ソフトの概念を変えたカラヤン
ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908-1989)は、録音や映像という音楽ソフト制作に終生変わらぬ情熱を持って取り組み、それらを演奏会の代用品という位置づけから、大量生産と消費が可能な芸術作品へと押し上げた人物でした。録音方式は1930年代後半のSP時代から1980年代のデジタル録音まで、映像は1950年代のフィルム撮影から1980年代のビデオ収録まで、常に最新鋭の技術革新を採り入れながら自らのレパートリーを新しいフォーマットで上書きしていったカラヤンですが、特に1970年代後半から世界的に実用化されたデジタル録音技術、そしてその延長線上でフィリップスとソニーが開発したコンパクトディスクについては、1981年4月、ザルツブルクで記者発表を開いてこの新しいメディアのプロモーションを買って出たほど積極的に支持。その姿勢が広く報道されることがCDというデジタル・メディアがLPに変わって普及していく上で大きな追い風となったのでした。当シリーズでもカラヤンのアルバムは何度も取り上げてきており、R.シュトラウスの作品集もこれまでオペラ全曲盤2つを含む5点のリマスター盤を発売してまいりました。
■生涯をかけて取り組んだR.シュラウス演奏の総決算
当アルバムの3曲は、1983年と1986年にベルリン・フィルと録音されたもので、当シリーズで既発売の「交響詩《英雄の生涯》/ 交響詩《死と浄化》」(ESSG-90227)、「アルプス交響曲 & 変容」(ESSG-90240)と同様、いわばカラヤンにとっては、半世紀にわたる指揮活動を背景に、自分の死後後世に残す最高のソフトを残すべく、その持てる全ての知力を動員して収録セッションを重ね、CDおよび家庭用ホームビデオ再生用の演奏映像の制作に力を入れた時期の所産です。20世紀に活躍した作曲家の中で最も巧みなオーケストレーターの一人として知られるR.シュトラウスの交響詩やオペラは、オーケストラの持つ多彩なパレットが作り出す音色の無限の可能性の魅力を堪能させてくれるレパートリーであり、カラヤンが最も得意とし、またカラヤンという音楽家の特質を最も端的な形で示すことのできるレパートリーでもありました。それゆえその生涯にわたって演奏に取り組み、多くの作品について、録音技術の進歩や再生媒体の変化に伴って録音を繰り返してきました。映像作品を除いても、《ドン・キホーテ》については1965年、1975年、1986年の3回、《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》は1951年、1955年、1960年、1972年、1986年の5回、《ドン・ファン》は1943年、1951年、1960年、1972年、1983年の5 回の録音が残されています。
■「何でもオーケストラの音で表現できる」R.シュトラウスの管弦楽法の粋
《ドン・キホーテ》は、「騎士的な性格の主題による幻想的変奏曲と題され、スペインの作家セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』に基づいて書かれ、ラ・マンチャの村に住む男が自分のことを騎士ドン・キホーテだと思い込み、サンチョ・パンサを従者に従えて遍歴の旅に出、そこで繰り広げられるさまざまな出来事を巧みなオーケストレーションで表現したオーケストラ曲。「何でもオーケストラの音で表現できる」と豪語したR.シュトラウスですが、この作品はまさにその言葉を実践したかのようで、風は弦楽器のトリル([2]風車の冒険)で、羊の群れは金管楽器のフラッター奏法([3]羊の群れに対する冒険)で、まるで本物のように表現されるのみならず、ずぶぬれになった衣服から滴る水([9]第8 変奏:修道僧に対する攻撃=弦楽器のピッツィカート)、そしてついには主人公が息を引き取る瞬間([12]終曲:ドン・キホーテの死:チェロのグリッサンド)まで、オーケストラの楽器の組み合わせによって描写されています。カラヤンとベルリン・フィルは、作曲が音符に託したイメージを最高のヴォルトゥオジティで細密に再現しており、文字通り音楽で描き出される映像が鮮明に浮かび上がってくるかのようです。
■若手の実力派チェリスト、メネセスが担ったドン・キホーテ
またこの作品は、主人公のドン・キホーテと従者のサンチョ・パンサの役を独奏チェロと独奏ヴィオラ(そしてその2人のやり取りにコメントを加えるような独奏ヴァイオリン)が演じる協奏曲的側面も持っていて、独奏者にも巧みな「演技力」が要求されます。中でもドン・キホーテを担うチェロは重要で、カラヤンも1965年盤ではピエール・フルニエ、1975年盤ではムスティスラフ・ロストロポーヴィチという当代最高のチェリストを起用していました。この1986年盤では、1982年のチャイコフスキー・コンクールで優勝し当時国際的に大きな注目を集めていたブラジル出身のアントニオ・メネセス(当時29歳)を抜擢し、大きな成功を収めています。シュトラウスはチェロの技巧を極限まで使い、幻想に取りつかれた主人公の様々な感情を表現しており、メネセスは落ち着いた語り口でじっくりと伝えていきます。ヴィオラとヴァイオリンは、それぞれベルリン・フィルの首席奏者のヴォルフラク・クリスト、コンサートマスターのレオン・シュピーラーが担い、メネセスの主人公に拮抗して、作品を雄弁に物語っていきます。
■まるで映像を見るかのような鮮やかな録音
この「ドン・キホーテ」の演奏は、1996年1月、ベルリン・フィルの定期公演と並行して別途セッションを組んで撮影された映像のサウンドトラックでもあります。家庭で再生可能なソフト制作を目的に、通常の演奏会の中継スタイルという体裁を取りながらも、実のところは数日にわたるセッションを組み、綿密に計算されたカメラワークによって収録された映像は、カラヤン自身の監修のもとで編集され、さらにその映像の音声部分の収録には、カラヤンの盟友だったプロデューサーのミシェル・グロッツのほか、ギュンター・ヘルマンスをはじめとするドイツ・グラモフォンのスタッフが担当するという盤石の布陣が採用されました。映像を見ると3人の独奏者はオーケストラのヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ・セクションの一番前に配置され、その配置が音にも反映されています。またカラヤンはその3人のソリストの前にいて文字通り演奏全体を統御する役割を視覚的にも果たしており、カラヤン自身が構想したカメラ割りもそれぞれの場面で担うパートのクローズアップを多用してシュトラウスのオーケストレーションの魅力を解剖するかのよう。そうした映像構成にフィットするかのような極めて明快なミキシングによる音作りもこの時期のカラヤン録音の特徴といえるでしょう。
■自家薬籠中の「ドン・ファン」と「ティル」
フィルアップの《ティル・オイレンシュピーゲル》と《ドン・ファン》の2曲も、カラヤン&ベルリン・フィルによる自家薬籠中のレパートリーといえましょう。前者では、いたずら者のティルが巻き起こす騒動がこれ以上ないほどの躍動感で活写され、「ドン・ファン」では永遠の女性を求めて彷徨う男の尽きることのない憧れが痛切に表現されています。この2曲は当シリーズでウィーン・フィルとの1960年デッカ録音を発売しており(ESSD-90149)、レコード会社、録音技術、オーケストラ、そして演奏そのものの違いを比較していただくことも、興味深い聴体験となるのではないでしょうか。
収録曲
リヒャルト・シュトラウス Richard Strauss
交響詩《ドン・キホーテ》 作品35
Don Quixote, Op. 35
騎士的な性格の主題による幻想的変奏曲
Fantasische Variationen über ein Thema ritterlichen Charakters
1. 序奏 ― 主題 / Introduktion (Mäßiges Zeitmaß) - Thema (Mäßig)
2. 第1 変奏 / Variation I (Gemächlich)
3. 第2 変奏 / Variation II (Kriegerisch)
4. 第3 変奏 / Variation III (Mäßiges Zeitmaß)
5. 第4 変奏 / Variation IV (Etwas breiter)
6. 第5 変奏 / Variation V (Sehr langsam)
7. 第6 変奏 / Variation VI (Schnell)
8. 第7 変奏 / Variation VII (Ein wenig ruhiger als vorher)
9. 第8 変奏 / Variation VIII (Gemächlich)
10. 第9 変奏 / Variation IX (Schnell und stürmisch)
11. 第10 変奏 / Variation X (Viel breiter)
12. 終曲 / Finale (Sehr ruhig)
アントニオ・メネセス(チェロ)
António Meneses, Violoncello
ヴォルフラム・クリスト(ヴィオラ)
Wolfram Christ, Viola
レオン・シュピーラー(ヴァイオリン)
Leon Spierer, Violin
13. 交響詩《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》 作品28
Till Eulenspiegels lustige Streiche, Op. 28
ロンド形式による、昔のならず者の説話による
nach alter Schelmenweise - in Rondeauform
14. 交響詩《ドン・ファン》 作品20
Don Juan, Op. 20
ニコラウス・レーナウの詩による交響詩
Tondichtung nach Nicolaus Lenau
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Berliner Philharmoniker
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
Conducted by Herbert von Karajan
[録音]
1986年1月(ドン・キホーテ)、1986年6月(ティル・オイレンシュピーゲル)、1983年2月(ドン・ファン)、ベルリン、
フィルハーモニー
[初出]
[ドン・キホーテ、ティル・オイレンシュピーゲル]419 552-2(1987年)
[ドン・ファン]410 959-2(1984年)
[日本盤初出]
[ドン・キホーテ、ティル・オイレンシュピーゲル]F35G 20140 (1987年8月)
[ドン・ファン]F35G 50066 (1984年7月)
[オリジナル・レコーディング]
[プロダクション] ギュンター・ブレースト
[レコーディング・スーパーヴィジョン] ミシェル・グロッツ(ドン・キホーテ、ティル)、ヴェルナー・マイヤー&ミシェル・グロッツ(ドン・ファン)
[バランス・エンジニア] ギュンター・ヘルマンス
[エディティング] ユルゲン・ブルグリン&レイナー・ヘプファー(ドン・キホーテ)、ライナー・ヘプファー(ティル)、ライ
ンヒルト・シュミット(ドン・ファン)
[Super Audio CD プロデューサー] 大間知基彰(エソテリック株式会社)
[Super Audio CD リマスタリング・エンジニア] 東野真哉(エソテリック株式会社)
[Sテクニカルマネージャー] 加藤徹也(エソテリック株式会社)
[解説] 諸石幸生 寺西基之
[企画・販売] エソテリック株式会社
[企画・協力] 東京電化株式会社